UK sees threat to Taiwan if West does not support Ukraine
構図が似ていることもあって、中国がロシアに続いて戦争を仕掛けるのではないかと危惧されているものです。
しかし、ロシアが武力行使に動いたからと言って、中国も同様に動くと考えることに正当性はあるのでしょうか?
もちろん、台湾統一は中国の長年の課題ですから、ウクライナ侵攻以前からその可能性は否定できず、現在においても変わりありません。
米国が対中強硬策を必要以上に強めるようであれば、中国のメンツを守ることが優先され、武力行使に動く可能性は俄然高くなります。
しかし、現時点では米国は対立姿勢を維持しつつも寧ろ強硬策を抑制する方向に動いていることから、米中対立を理由に武力行使に踏み切る可能性はないと考えて差支えないでしょう。
ロシアの軍事行動は、戦争はもう起きないという国際社会の「常識」を覆したことから、世界のホットスポットが戦争に発展する可能性を意識せざるを得なくなり、その一環で台湾問題を見直すこと自体は正当な行為でしょう。
また、ウクライナへの軍事支援により米欧の対応力が低下している現在は狙い目であると考える勢力があったとしても不思議ではありません。
しかし、ロシアの武力行使は未だ成功に至っておらず、ロシアの二の舞になると考えると相当な覚悟が必要なはずです。
ペロシ氏台湾訪問により武力行使の可能性は高まったのか
8月にナンシー・ペロシ氏がアジア訪問の一環で台湾を訪れたことで、報復措置として中国は台湾周辺で軍事行動を展開したことから緊張が高まり、中国リスクがより現実的なものとして国際社会に認識されることとなりました。
しかし、この時の中国の動きは別の意図があると筆者は考えています。
ペロシ氏がアジア訪問を計画していた際に台湾訪問の可能性がリークされたところ、中国政府から猛烈な反発を受けています。
China warns of a possible military response to Pelosi's potential Taiwan trip
ペロシ氏は下院議長という要職にあったものの政府の一員ではないため、脅迫とも言える中国の反応は過剰であり際立つものでした。
米国政治家は脅迫に屈すると弱腰と見られ政治生命にかかわるため、そのような仕打ちを受けると脅迫者の要求と正反対のことをします。つまり、ペロシ氏は脅迫されたからこそ台湾訪問を断行したと言えます。
問題は、中国も米国政治家のこのような性質を熟知しているはずなので、ペロシ氏を脅せば必ず台湾訪問を断行すると予想できていたことにあります。
そう考えると、過剰ともいえる中国の反発は、ペロシ氏に必ず台湾を訪問させることが目的であったのではないかということになります。報復措置という名目で軍事行動を展開することで中国リスクを国際社会に意識させることや台湾統一を急ぎたい軍部のガス抜きが狙いだったのではないでしょうか。
中国はどのようにして台湾統一を成し遂げたいのか
中国はそもそも台湾統一を武力行使により成し遂げたいのでしょうか。
経済面で見ると、中国と台湾の関係は年々密接なものとなっており、中国が台湾の経済インフラを武力により破壊してしまうと自国経済を自ら攻撃するに等しく、政治的な意地を貫くこと以外に武力行使に意義はありません。
寧ろ、両国の経済関係を更に密接なものとしていくことで、台湾経済の中国依存度が高まるようにしていけば、独立を唱える台湾政治家は経済界や国民の支持を得られなくなり、台湾は親中国の政治体制に変わっていくと考えられます。
そうなれば香港と同じく、中国政府の意向に従う傀儡政府が樹立されるようになり、実質的な台湾統一が実現します。
時間はかかりますが、経済面を損なうことなく政治目標が達成できるわけですから、台湾統一を短期間で実現しなければならない事情が生じない限り、このプランがずっと稼働していると考えられます。
党大会では武力行使の可能性を示唆するも
10月党大会において習近平氏は「香港は終わった。次は台湾だ」という趣旨のスピーチを行っています。
Xi Jinping opens Chinese Communist party congress with warning for Taiwan
これによりフォーカスは台湾に移ったことは明確ですが、香港では武力行使していないのですから、次は台湾と示唆したからといってもそれが即ち武力行使を意味することにはなりません。
現に、習近平氏自身が武力行使の選択肢は排除しないものの、平和裏に台湾統一を進めるのが基本路線であると明言しています。
Xi Jinping Suggests China Could Invade Taiwan
これらの発言はペロシ氏の台湾訪問の後に行われたのですから、武力行使は依然としてメインシナリオになっていないことと、メインシナリオに押し上げてしまう可能性のある国際社会の介入を排除したいことが窺えます。
米CHIPS法は台湾を困窮させる
米国は中国リスクを理由にCHIPS法を成立させ、台湾に大きく依存する半導体製造を自国内にシフトさせることとしています。欧州も同様の法令を準備しています。
The CHIPS and Science Act: Here’s what’s in it
The EU Chips Act: €43 billion to build a new European chipmaking industry
日本やカナダも自国内での半導体製造を強化する計画としています。
コロナの影響で半導体の製造や物流に支障が生じたことで半導体不足は各国を悩ませることになったわけですが、中国が武力行使に動けば影響度はさらに大きくなることから台湾への依存度を引き下げることで備えようとしているものです。
各国の立場からすればリスク管理として当然の動きと言えますが、台湾からすれば各国から見放されることとなるため、結果として中国依存度を高めるしかなくなります。
政治面では台湾を守ると明言する一方で、経済面では台湾を中国の方に追いやるというチグハグな動きを見せているのが日本を含む諸外国の実態です。
中国が軍事行動により中国リスクを意識させたのも、各国が台湾との関係を見直すことを狙っていたと考えると、両国の経済関係をより密接にするという経済的台湾統一の計画を加速させることが最終目標であったことになります。
最近台湾で行われた統一地方選挙では与党が大敗し、台湾独立は国民にとって最早重要なテーマではないことが露呈しました。
Taiwan president resigns as party head after local election losses
中国の経済的台湾統一の作戦がうまく進行している証左と言えるでしょう。
結論
中国による台湾統一が平和的な路線から武力行使路線にこの1年間で変わったと考えるべき理由はなく、諸外国のリスク認識が変わったに過ぎないと見るべきでしょう。
とくに日本の場合は、中国リスクをこれまでは意図的に無視していたところ、ようやく向き合うようになったということではないでしょうか。


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