具体的には、長期金利の変動幅を、±0.25%程度から±0.5%程度に拡大しています。
変動幅の中心点は0%から動いていないため黒田総裁は利上げではないと強弁していますが、長期金利を低位に抑えるために行っている市場操作において下限はあまり意味がなく、操作対象金利の上限を引き上げることは利上げ以外の何物でもありません。
マーケットは日銀が今回の会合において利上げを行うことを予期していなかったため、当日の為替(ドル円)は137円台から130円台まで、日経平均は27300円台から26400円台まで急変する大きなサプライズとなりました。黒田総裁は政策変更の理由を市場機能の改善をはかるためと述べていますが、大きなショックを与えることが最善の方法ということでしょうか。
黒田総裁の説明は釈然としませんが、足元のインフレ動向やその一因となっている円安の影響を勘案すれば、政策判断として妥当なものと言えるでしょう。(もっとも、直前に政府・日銀の共同声明改定の観測報道が出ていましたから、政府の圧力を受けての政策変更だったのかもしれません。)
国際機関からも批判されるコミュニケーションの拙さ
政策判断の妥当性はともかく、マーケットとのコミュニケーションにおいては大きな問題があると考えます。
世界的にインフレ傾向が顕著となり、各国の中央銀行が大幅な金融引き締めに動く中、流れに反して金融緩和政策を維持することを黒田総裁は繰り返し述べてきました。
総裁の発言を受けて、マーケットは「年内の政策変更はない」「来年4月までの総裁任期中の政策変更はない」と信じていました。
しかし、その信頼はものの見事に裏切られることとなりました。
黒田総裁は会合後の記者会見で経済等の動向に変化があったのだから、それに応じたことをやるのは当然と発言していますが、それならば何故今までは何もしなかったのでしょうか。
マーケットの信頼を損なった黒田総裁が今後何を言っても、マーケットは疑心暗鬼に陥るだけです。
実際、金融緩和を続けるという黒田総裁の言葉を信じていないプレーヤーがすでに登場しています。
Goldman Sachs says the Bank of Japan may start tightening
今回のコミュニケーション不足は、主要国の中央銀行としてはあまりにも稚拙で、IMFも呆れています。
IMF Says BOJ Yield Move Is Sensible, Urges Clearer Communication
コミュニケーションの拙さがリセッションを引き起こす可能性
それでも、コミュニケーション不足が日銀の信認問題に過ぎないならば些末な問題と言えるでしょう。
世界各国の中央銀行は最近まで金融緩和姿勢で揃っていましたが、インフレ退治のために金融引き締めに大きく舵を切った中央銀行がほとんどで、日銀はマイナス金利政策と量的緩和を未だに続ける唯一の中央銀行となっています。
つまり、安価な資金を世界に供給しているのは日本しかいないということであり、その姿勢が他国の中央銀行の政策効果を減殺しています。
しかし、コミュニケーションが壊れたことで、日銀が早い段階で金融緩和を解除すると考えるようになれば、資金供給元として当てにできないということで、マーケットプレーヤーの動きに変化が生じます。
その結果、量的緩和による資金供給が生んでいたマーケットの歪みが解消に向かい、バブルとなっているセクターは崩壊するおそれがあります。
また、日銀も金融引き締めに転じると見られることで、他国中央銀行の金融引き締めの減殺要因が無くなり、俄然効果を発揮することになります。
金融引き締めが各国において効いてくるようであれば、世界経済は急ブレーキを踏まれた恰好になります。
つまり、日銀の怠慢と傲慢が、世界経済のリセッション入りのトリガーを引いたかもしれないということです。


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