米国は債務上限到達でデフォルトの可能性も

2023/01/31

米国

 2023年1月に入って、米国は債務上限に到達するとイエレン財務長官は米国議会に対し警告を発しました。

U.S. will hit its debt limit Thursday, start taking steps to avoid default, Yellen warns Congress

 債務上限は、政府が際限なく債務を膨らますことがないように債務総額に制限を設けているものです。つまり、上限を超えた米国債の発行による資金調達ができません。

 問題は、毎年の予算は債務上限を考慮することなく決定されるため、政策遂行のために予算を執行しようとしても、債務上限により実行できない場合が生じます。


債務上限到達の問題点

 議会に対する警告から約1週間後に債務上限に到達しましたが、優先順位の低い支払いの先延ばしや、債務上限の対象ではない銀行借り入れといった手段も当座の選択肢としてあるため、イエレン財務長官は6月初め頃までであれば乗り切れる見通しを示しています。

 しかし、あくまでも小手先の調整でしかないため、何もしなければ6月以降は資金不足は不可避ということも意味します。

 対応としては、予算を見直して支出を大幅に削減することがまず浮かびますが、支出を抑えただけでは債務は減少しないため、債務上限に到達してしまった現状では根本的な解決になりません。大幅な増税とセットで実施しないかぎり支出削減で対応するのは最早手遅れです。

 米国債を発行できるようにするためには、債務上限の引き上げ・一時停止・撤廃といった見直しが必要不可欠となります。

 そうしなければならない理由は主に二つあります。

 米国では資金不足が確実となった時点で支出抑制のために政府部門を閉鎖するというルールがあり、今回も6月頃にはそのルールが適用される可能性があります(実際に政府部門閉鎖となったことはあり、最近ではトランプ政権時代にメキシコ国境に建造すると言っていた壁の予算手当てができなかったために政府部門閉鎖となっています)。

 また、資金手当てができない状態が続くと、元利金の支払い時期を迎える既存債務が出てくることになります。

 新たに米国債を発行できれば借り換えることで対応できますが、発行がストップしている状態で返済原資を全額確保することは困難であるため、期日通りに支払いができなければデフォルト(債務不履行)となります。

 米国債は世界でもっとも安全な資産として保有されているわけですから、これがデフォルトするとなると世界経済や市場への影響は計り知れません。


米議会はどう対応するのか

 経済や国民生活への影響を考慮すれば債務上限に到達した状態を長く放置することはできないため、共和・民主両党は債務上限の見直しに動くのがこれまでの常です。

 到達する都度上限見直しを行うならば上限を設定することの意味が失われるのですが、債務上限遵守に固執することで国民生活に多大な影響が出ると政党支持率に響くため、上限見直しに応じざるをえないのが実状です。

 今回もそのように債務上限が引き上げられると見るのが今のところは妥当だと思いますが、共和党の動きが気になるところです。

 2011年には、政府部門閉鎖やデフォルトを回避したものの、債務利払いを先送りするというテクニカル・デフォルトが議会で取り沙汰されただけで市場は混乱に陥りました。

 共和党は中間選挙で下院議席数の過半数を獲得しましたが、現在の予算は民主党が過半数を握っていた時に成立したため、共和党は予算の中身に不満を持っており、「小さな政府」を標榜する政党としては支出を削減したいところです。

 つまり、債務上限見直しと引き換えに予算の大幅な削減を共和党は要求するものと考えられます。

 一方、民主党は、上限見直しのネックは共和党と喧伝して国民の支持を失わせるべく動くと思われますが、国民の支持を失うリスクがある共和党に対して有利な立場で交渉できると考えている限りは予算削減等の譲歩にはなかなか応じないでしょう。

 ここで問題となるのは共和党内に存在するある一派です。

 共和党は多数派政党として下院議長を選出する立場にありますが、党内の十数名が共和党ナンバーワンを議長に選出することを拒んだため、過半数支持が得られる候補者がおらず、15回も投票を繰り返すという不名誉な事態が最近報じられたばかりです。

McCarthy claims speakership on 15th ballot

 議長となったマッカーシー議員は、反対者の政策主張を受け入れることで賛成票を何とかまとめることができたわけですが、その受け入れた政策主張の中に債務上限の見直しを容認しないというものがあります。

 これは債務上限見直しを一切認めないということなのか、予算の大幅な削減とセットであれば見直しを認めるということなのか判然としませんが、原理主義的な主張が目立つため、恐らくは上限見直しを一切認めないということではないかと思われます。

 共和党の姿勢がこの少数一派によって縛られるようであれば、債務上限見直し交渉が進まず、2011年のように政府部門閉鎖やデフォルトの可能性が出てきます。

 共和党幹部がこの少数一派を無視して債務上限見直しを進めるようであれば、共和党は内部分裂を起こし、下院は多数派が存在しない機能不全の状態に陥ります。

 米国の国家予算が膨らんでいる理由の一つにウクライナ支援がありますので、米議会の動向次第では世界情勢にも影響を及ぼすことになるかもしれません。


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