Fed Set to Raise Interest Rates to 16-Year High and Debate a Pause
僅か1年余りの期間で5%も金利を動かしたので、経済がそれにあわせて調整する時間的余裕がないままに高金利環境に移行したことで景気が年内にもリセッション入りすると懸念されています。
利上げとは
FRBはインフレの進行を食い止めるために利上げを実施してきました。インフレ率が目標水準である2%を大きく超えたことで、利上げ実施によりインフレ率を抑制しようとするものです。
インフレ率が高くなった当初は、アフターコロナによる一時的な需要増やサプライチェーン問題による一時的な供給減が要因であるとの見方から金融政策による対応は不要というスタンスでしたが、サプライチェーン問題が緩和に向かう一方でインフレや人手不足に対応した賃金増が消費動向を支えていることが確認されるにつれ、FRBは金融政策出動が遅れたことに気づき、利上げを開始するとともに、利上げ幅を大幅に拡大することでその遅れを取り戻そうとします。
利上げでインフレを抑制するということは、企業の調達コスト上昇が投資意欲減退に繋がり、ひいては企業活動の減速に至り、経済全体における需要が後退することで価格上昇圧力が後退することを期待するものです。家計についても住宅等の購入は借り入れで賄うことが多いので利上げにより影響を受ける点では同様ですが、消費意欲減退は実質所得の低下に起因するところが大きいでしょう。
このように利上げによってインフレ退治しようとすれば経済活動の減速を招くことは当然の帰結となるわけで、利上げの幅とスピードが大きかったことから経済活動の鈍化程度では済まずにリセッション入りすることが懸念されているわけです。
リセッション入り予測は主流なのか
景気先行指数は昨年8月よりリセッション入りを示す水準が続いています。
少々古い話になりますが、昨年末のウォール・ストリート・ジャーナル調査ではエコノミストの61%が年内のリセッション入りを予測していました。
Economists in WSJ Survey Still See Recession This Year Despite Easing Inflation
その3か月後のブルームバーグ調査でも投資家の48%が年内のリセッション入りを予測していました。
Investors predict US recession in 2023 - here are the facts
さらに3か月経過していますから、年内というタイミングでのリセッション入りを予測する向きは減少していると思いますが、リセッション入り予測は妥当なのでしょうか。
インフレは落ち着いてきている
6月のFOMC(FRBの金融政策決定会合)では、それまでの会合では毎回実施していた利上げを一旦見送ることとしました。
まだ今後も利上げがあるとFRBは示唆しており、6月会合の議事録では利上げ実施を主張していた理事がいたことも分かっているので、次回会合以降に再度利上げが行われる可能性は濃厚です。
しかし、今後予想以上にインフレが落ち着いてくるようであれば利上げサイクルが想定よりも早く終了となる可能性もあるでしょう。
May CPI: Still Too High, but Better Days Ahead
インフレ率は5月CPIで4.0%とFRBが望むよりもまだ高い水準ではありますが、1年前のピーク水準から下落を続けています。
また、内訳をみると、ピーク時ではプラス寄与が最も大きかったエネルギーはマイナス寄与に転じており、その他の財によるプラス寄与も縮小しています。足元では住居関連項目のプラス寄与がもっとも大きくなっています。これは金利水準が急速に上昇してきたことが要因となっている面があるので、利上げペースが緩和されたことで今後落ち着いてくるのではないかと考えられます。
利上げの効果によるものであるかはともかく、FRBが利上げペースを落とすには十分な状況となっています。
(なお、FRBがもっとも注目しているとされるインフレ指標はコアPCEですが、ニューヨーク連銀が新たなインフレ指標MCTの公表を開始しており、これによれば足元のインフレ率は3.5%です。)
雇用市場は依然として強い
米国の労働参加率はコロナ禍により大きく低下したのち、緩やかな回復基調にあるものの未だにコロナ前の水準には戻っていません。
コロナ禍により働き方を見直す動きGreat Resignationが顕著となった結果と解釈する向きは、労働市場から一旦離脱した人々がまだ戻ってきていないためと見ています。
労働市場が不完全な状態である以上は雇用関連指標も割り引いて見る必要があるという主張に繋がっています。
インフレと利上げにより各種コスト上昇に直面している企業は遅かれ早かれ人件費削減に着手するという見方が根底にあり、IT業界を中心とした大型レイオフのニュースはその証左となっています。
企業が業績見通しに応じて人件費削減に動くのは当然のことですが、ここで考えなければならないのはコロナ禍により大きな影響を受ける業種はすでにレイオフを敢行しているということです。
そのため、コロナから経済が回復するにつれて手放した労働者も戻す必要が生じており、雇用統計に見られるように雇用者数は増加傾向が続いており、十分な人員を確保できていないことから平均時給もコンスタントに伸び続けています。
コロナ禍が無かったならば、各企業とも人件費削減を考えざるを得なかった状況かもしれません。しかし、それは定常状態の業績を維持するために行うコスト削減の一環です。回復期にある現状では業績を元に戻すことが最優先ですから、そのため人員確保は必要不可欠です。
逆にIT業界はコロナ禍により需要が伸びたため増やした人員を局面変化による需要後退とともに人員を整理する必要が出てきたにすぎず、インフレや利上げはレイオフの最大の理由ではありません。
ここで労働参加率の話に戻ると、ニューヨーク連銀の分析では、人口動態の影響を考慮すると労働参加率はコロナ前の水準まで回復していると考えられるということです。1946-1964年生まれのベビーブーマー世代の引退が大幅に増加していることが大きいようです。
What Has Driven the Labor Force Participation Gap since February 2020?
この分析が正しいならば、雇用される意向のある人は皆すでに労働市場に戻ってきていることになり、企業の人手不足は本物だということです。
雇用市場は堅調であり、少なくともこの面からFRBは利上げ停止を考慮しなければならない理由は見当たりません。
寧ろ人手不足から来る賃金上昇がインフレ圧力となる可能性があり、雇用面からは利上げ続行に傾いてもおかしくない状況です。
もっとも、ニューヨーク連銀の別の分析では賃金上昇によるインフレ圧力は大きくないとのことですから、FRBは雇用が維持されていれば満足かもしれません。
How Much Do Labor Costs Drive Inflation?
米国経済を見通すうえでインフレや雇用のみについて着目して判断できるものではありませんが、当面の先行きを考える上では大きなファクターであり、これらからは景気減速感を示す内容はとくに見当たりません。
これ以外でも、例えば州別景気一致指数を見ても減速感は感じられません。
FRBは利上げの一方QEをまだ続けている
エコノミストたちは忘れてしまっているようですが、FRBは利上げを続ける一方で量的緩和(QE)を実質的に継続しています。
利上げというブレーキを踏む一方で、QEというアクセルを踏んでいる状態ですから、ブレーキによる制動効果が十分に得られない状況にあります。
筆者としては利上げ前にQE解除(債券購入の停止)、もしくは利上げ開始と同時に量的引き締め(保有債券の売却)に転じるものと予想していたので、QEを実質的に続ける現在のスタンス(表向きはQE解除ですが、一定額を超える償還分については買い足すことになっています)は謎でしかありません。
実際、QEの中心である米国債(インフレ連動債・Tビル除く)とモーゲージ債の保有額合計は利上げ開始から1年余りで僅かに1割程度しか削減されていません。
2022/3/2 7650444百万ドル
2023/7/5 6898963百万ドル
変化 ▲10%
また、他国のこと故考慮されていないのが、日本ではBOJが異次元金融緩和を続けていることです。日本で低金利の資金を調達し、米国にて高利回りの投資に充てることが可能な状況になっており、だからこそ為替が円安に傾いています。
つまり、資金調達のハードルを上げて、経済活動を減速させることが利上げの目的なわけですが、QEやBOJのせいで資金調達のハードルが十分に上がっていないのが実状です。金利水準は上昇しているものの、多くのエコノミストが考えるよりも金融環境は緩和的であるということです。
具体的に検証する術はありませんが、過去の利上げサイクルとくらべて今回の利上げ効果は格段に小さいのではないでしょうか。十分な効果を得るためには少なくともFRBは積極的に保有債券を圧縮する必要があります。
ここで利上げ終了となれば
利上げが終了となれば最悪期が過ぎたものとして株式市場は好感するでしょうし、経営者の景気見通しも楽観的になるでしょう。
センチメント改善により、景気は加速する方向に向かうものと考えられます。
過去9回の利上げサイクルでは、利上げ終了から1年後で株価が上昇しているケースは7回に及んでいることが裏付けています。
このように利上げ終了後は景気が良くなる可能性が高く、当面は国内要因でリセッション入りを懸念すべき理由はないように思えます。
海外には不安要素も
米国内では大きな懸念材料は今のところ見当たりませんが、国外に目を転じるとウクライナ・中国といった不安要素はあります。筆者としては英国も不安要素の一つとして数えています。
米国が年内にリセッション入りするとすれば海外要因によって引き起こされるのではないでしょうか。


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