攻撃規模が大きかったことに加え、イスラエルにとっては奇襲となったことで被害は大きく、世界を驚愕させました。
その後イスラエルも反撃に出ており、双方の被害は拡大を続けています。
Israel is at war with Hamas. Here’s what to know
ハマスはガザ地区を統治するイスラム系の政治・武装勢力で、日欧米ではテロ組織と認定しています。
ハマスがイスラエルに攻撃することは過去に何度も発生していますが、これだけの大規模の攻撃は前例がなく、しかもイスラエルがまったくの不意を突かれたという点でも過去の攻撃とは一線を画しています。
ハマスの目的は何か
イスラエルは敵対勢力と緊張関係に常に晒されていることから、その諜報能力は世界最高と言われますが、今回の攻撃の予兆を掴むことができず警戒をしていませんでした。
攻撃規模が大きかったためアイアンドームとして名を馳せる防衛体制も十分に機能を発揮することができず、被害拡大に繋がりました。
このことにより、イスラエルの諜報体制・防衛体制は思われていたほど盤石ではないというが露呈してしまいました。
他のイスラム武装勢力や、反イスラエルのアラブ諸国にとってイスラエルを攻撃するハードルが一段下がったと映っていることでしょう。
このタイミングで攻撃したのは、米国の目がウクライナに向かっていること、イスラエル・サウジアラビア間の国交正常化交渉を頓挫させたかったことが考えられます。
国交正常化交渉は親米派の2国であるだけに米国が主導しています。
両国とも近年では米国との関係は以前ほど良好なものではないものの、和平が実現すれば中東における米国の存在感が大きく増します。(国交正常化の見返りにサウジは米国に国土防衛等を要求していましたから、実現していれば米国軍の大幅増派となった可能性が高いです)
反米・反イスラエルのアラブ勢力としては容認したくない事態です。
攻撃後にサウジはイスラエルを非難する声明を出していますから、目的は一定程度達成されたと考えられます。
イランの関与はあったのか
ハマスはイランの支持を受けている武装勢力の一つであるため、欧米各国やメディアは攻撃におけるイランの関与があったのではないかと疑っています。
France's Macron says Iran comments praising Hamas attack unacceptable
一方、イランのハメネイ氏は関与を否定するコメントを出しています。
Iran's Khamenei says Tehran was not behind Hamas attack on Israel
イランが関与していたとなれば、米国に戦争の大義名分を与えうるため、関与の証拠探しに当面各方面が躍起になりそうです。
しかし、そのような証拠が簡単に見つかるのであれば、ハマス攻撃も事前に察知可能であったことになり、諜報組織の無能を認めることになるか、イスラエルに対する情報供与をしなかったことになるため、米国としては証拠があったとしてもその存在は決して認めることはないでしょう。
しかし、イランの関与を疑うのは故のないことではありません。
ハマス攻撃の直前にイランの大臣がハマスやヒズボラの幹部と複数回会談を行っていたと報じられています。
まったく関係のない事案についての会談だったかもしれませんが、今回の攻撃に関する打ち合わせだったのかもしれません。
これだけでは何の証拠にもなりませんが、筆者としてはイランの関与は攻撃の情報を受けていた程度のものではなく、攻撃の主導的立場にあるのではないかと考えています。
イランは様々な政治・武装勢力と繋がりがあるため、これらを上手く使うことで自ら表舞台に出ることなく中東情勢に影響を及ぼしています。
過去の例では、所謂「アラブの春」でもイランが暗躍していたと考えられます。
アラブの春は2010年代にアラブ各国で巻き起こった民主化運動で、チュニジア・エジプト・リビアの独裁政権崩壊のきっかけとなったことで注目されました。
その後には反動が起きるなどしたため評価としてはまちまちですが、いずれにしろ運動の影響があまりなかったイランは一見すると何も関係ないように見えます。
この運動を推進した勢力の一つとして「ムスリム同胞団」というイスラム組織があります。
エジプトでは、アラブの春で革命を起こし、ムバラク政権打倒後の大統領選に勝利し、権力を掌握します。
ムスリム同胞団はイランの支持を受けている組織であると考えられます。
なぜならば政権掌握後にエジプトとは長らく対立関係にあったイランを初外遊先に選んでいるからです。
このようにイランがその支持する勢力を通じて各国の政権に対して揺さぶりを仕掛けたのがアラブの春の本質です。
エジプトではクーデター発生で1年後に大統領は追放され、ムスリム同胞団はテロ組織に認定されたため、権力掌握は長続きしませんでした。
しかし、親米だった国々では政権が傾く一方で、米国は何も支援しなかったために反米感情が強まるという成果をイランは得ました。
また、民主化運動はアラブ人としてのアイデンティティを再確認するきっかけにもなったため、反イスラエル感情も強まりました。
つまり、大きなリスクを負うことなくイランは中東における反米・反イスラエルの勢力拡大に繋げています。
今回もハマスという駒を使うことで反イスラエルを推進しています。
攻撃の正当性の有無とは関係なく、多くのアラブ人が報復攻撃の対象となっている時点で、アラブ諸国はパレスチナを支持することになります。
また、これだけの大規模な攻撃ですから、準備するだけでも多くのリソースを必要としたはずですが、それをハマス単独で行えたかという疑問も生じます。
やはり外部の協力が不可欠であり、イランが最有力ということになります。
すべて筆者の推測でしかありませんが、イランの関与の可能性は高いと思われます。
この先の展開はどうなるのか
ハマス・イスラエル両者の戦闘拡大は当面避けられない状況ですが、この先気になるのが両者以外の勢力も参入してくるのかということです。
ハマス側としては、イランと会談もしていたとされるヒズボラが追随しそうですし、イスラエル周辺国もここぞとばかりに攻撃を加えてくることが考えられます。
実際、レバノンやシリアとの国境付近ではハマス・ヒズボラ等の武装勢力による小競り合いが起きていると報じられていますので、こちらでも戦闘が拡大することが危惧されます。
Hezbollah, Hamas claim attacks on Israel from Lebanon
Israel fires back after Syrian shells land in Israeli territory -military
イスラエル側としては、米国がどのように関与するかが注目されます。
今のところは軍事支援のみで米軍の派遣はないとしています。
'An act of sheer evil': Biden pledges support for Israel after attack
バイデン政権としては最大限の支援をしたいところでしょうが、議会の了承を取り付けるためにはウクライナ支援とどうバランスを取るのかという問題があります。
とくに米軍派遣ともなれば、ウクライナに対しては派遣を回避してきたわけですから、イスラエルに派遣するだけの大義名分が必要となります。
米国が積極的に動かないとなれば、ハマス側が一段と勢いを増し、戦線が拡大していくのではないでしょうか。
イスラエルがハマスに負ければ国体を維持することは難しくなっていくでしょうし、ハマスに勝利すれば中東は反イスラエルで団結することになりそうですので、どう進んでもイスラエルはイランの術中にはまっています。


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