BoEはインフレ退治に躍起となっており、直近でも50bpの大幅利上げを敢行していますが、インフレを思うように抑制できていないのが実状です。
中央銀行はその役割期待からインフレ退治に邁進するしかありませんが、その度重なる利上げによる軋みが出始めています。
利上げに伴う住宅ローン金利の高騰
BoEは直近の会合にて政策金利を5.0%に引き上げており、今後も利上げが続く見通しとなっています。
金利水準が上昇したことで住宅ローン金利も上昇しています。
英国の住宅ローン市場において利用が多いとされる2年固定ローンおよび5年固定ローンの平均金利は6.23%、5.86%となっており、これは利上げ開始前の金利水準とくらべて返済額が約1.5倍になったことを意味します。
Two and five-year fixed-rate mortgages in UK at highest level for seven months
金利上昇が借り手の返済能力低下を招いている
日本のフラット35のように長期固定のローンならば既に借入している人は金利上昇の影響を受けることはありませんが、英国では借り換えを前提とした固定金利期間が短い住宅ローンの利用が主流となっており、低金利でローンを組んだ人たちの固定金利期間が終わろうとしているため、高金利の影響をもろに受けることになります。
借り手にとっては、2年固定・5年固定ローンに借り換える、あるいは固定金利期間終了後にそのまま変動金利に移行するという選択肢がありますが、どちらも大幅に高くなった金利を負担することになります。
高金利に耐えられるだけの返済能力がある借り手ならば問題ありませんが、返済計画が低金利が続くことを前提としているならば、どちらの選択肢も厳しいものになります。
そうなると返済を諦めるという選択肢しか実質的に残りません。
物件を売却するのか銀行に物件を渡すことでローンを完済することになります。
単体の案件の話ならばそれで終わりですが、全国的に影響が出ている話であるため、このままでは大量の担保不動産が銀行の所有となってしまいます。
銀行は物件売却により資金回収するわけですが、大量の物件が一斉に市場に出てくると値崩れの恐れがあり、資金回収が不十分に終わるかもしれません。
この事態を避けるため、銀行業界は返済不能となってから担保権行使まで12か月間の猶予期間を置くことを取り決めました。
UK mortgage holders to get 12-month grace period before repossessions after sharp rate hike
ハント財務相が大手銀行と話し合って決まった対策ですが、これは銀行側の負担を軽減するものでしかなく、ローン借り手の負担を軽減する対策にはなっていません。財務相はそもそも話し合う相手を間違えているからです。
家計の多くは危機的な状況に陥る可能性
現地シンクタンクの分析によれば、利上げの影響で年内に貯蓄をすべて取り崩すこととなってしまう家計は120万世帯に及ぶと試算しています。
Mortgage catastrophe brews in Britain as millions are pushed toward insolvency
住宅ローン借り入れしている世帯数は740万世帯ということですから、そのうち16%が返済不能に陥るリスクがあることになります。
しかし、高金利の影響を受けているのは返済不能に陥るリスクのある120万世帯だけではなく、ローン借り入れしている740万世帯のほとんどです。
620万世帯は返済不能に陥るリスクは低いのかもしれませんが、固定金利期間が終了すれば高金利の影響に晒されることに変わりありません。
銀行は返済がされる限りは問題視しないでしょうが、支出が膨らむ家計の消費活動がさらに低迷し、経済に影響を及ぼすことをハント財務相は考慮する必要があります。
また、ローン金利上昇の影響を受けるのは住宅購入者に限った話ではありません。
賃貸物件に住む世帯は920万世帯あり、そのうち半数以上は家主がローン借り入れにより物件を所有しています。金利上昇によって返済負担が増した家主は負担増分を家賃に転嫁することになりますから、賃借人も間接的にローン金利上昇の影響を受けることになります。
経済への影響という意味ではローン借入者と同様にハント財務相は考慮する必要があります。
借入人の負担増を軽減する制度を早急に導入すれば軟着陸できるかもしれませんが、今の政府にはそのような機動的な対応ができるとは思えないので、この問題がさらに深刻化するまでは実質放置されることになるのではないでしょうか。


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