テレビ討論会の勝者はトランプではない

2024/07/09

米国

 次期米大統領候補のバイデン大統領とトランプ前大統領の二人による1回目のテレビ討論会が開催されました。

 両名とも党大会での大統領候補指名をまだ受けていないものの、討論会をきっかけに支持率の浮揚を狙うバイデン陣営が早期開催を呼び掛けて実現したものでしたが、結果としてはバイデン大統領の健康面に対する懸念を強めることとなり目論見が外れました。

Biden’s disastrous debate pitches his reelection bid into crisis

 バイデン大統領の健康不安は以前からあった懸念ですが、米国人は日頃テレビでニュースをあまり見ないため、今回の討論会の中継にてバイデン大統領の衰えを初めて目の当たりにした人は少なくなかったようです。

 テレビ討論会を重視する米国人は多いのですが、実際のところ視聴者が重視しているのは討論の内容よりもどちらの候補が大統領に相応しい印象であるかということです。(この点をトランプ陣営はよく理解しているようで、共和党予備選における討論会には一切出席しませんでした)

 トランプ前大統領は出鱈目な言い分であっても堂々としていたのに対し、バイデン大統領は言葉に詰まるなどして弱々しい印象を与えてしまったことが討論会の勝敗の決め手になりました。


撤退を求める選挙下手な民主党

 この討論会の結果を受けて、民主党内や党支持者からはバイデン大統領の選挙戦撤退を求める声が強まっています。

 まだ大統領候補指名前ですから、ここで撤退すれば別の候補を指名することは技術的に可能ではあるものの、選挙戦の途中で現職大統領が撤退するとなれば前例のない事態です。

 健康不安のない候補が望ましいのは明らかですが、撤退を求める人たちが理解していないことは選挙に勝てる可能性のある候補を擁立できなければ意味がないということです。

 代わりの候補となりうるのはハリス副大統領や民主党系の州知事や上下院議員たちですが、このうち議員は大統領候補としては嫌われる傾向が非常に強いため現実的な選択肢にはなりません。

 一般的には議員よりも州知事のほうが大統領選では有利とされますが、民主党は実質的に予備選を実施していないため、このタイミングで州知事が立候補しても全国的な知名度は低く、国政における政策方針も明らかではありません。

 これらの点ではハリス副大統領に軍配が上がるため、この中では最も有力な候補者です。

 オバマ元大統領夫人の名前も挙がっており、知名度の点では申し分ありません。

 問題は、ハリス副大統領であれオバマ夫人であれ、民主党支持者にとっては望ましい候補者と言えるでしょうが、無党派層の支持を集められる候補となりうるかということです。

 当選すれば初の女性大統領となり、オバマ元大統領に次ぐ二人目の非白人の大統領になります。

 政策よりも候補の印象を重視する投票者にとっては、この2点は大きなポイントとなりえます。

 リベラルな投票者は歓迎するでしょうが、保守寄りの投票者は難色を示すかもしれません。

 オバマ夫人についてはデータがありませんが、ハリス副大統領についての世論調査はこれまで繰り返し行われており、その支持率は常にバイデン大統領を下回っていました。

 性別等を気にする向きが一定程度いるものと推察され、バイデン大統領よりも強い候補となることは期待できません。

 民主党はバイデン大統領よりも強い候補を擁立できる見通しがないのですから、選挙を戦う上では撤退を求めるのではなく一丸となって支えるのが最善の道ですが、伝統的に選挙に弱いところをここでも露呈しています。


テレビ討論会の本当の勝者はケネディ氏

 テレビ討論会はバイデン大統領の自滅に終わったようなものですが、実はトランプ陣営も手放しで喜べる状況ではありません。

 トランプ前大統領もバイデン大統領とたいして変わらない高齢ですから、年齢からくる健康不安がクローズアップされればされるほど、両候補とも任期中に何か起きるかもしれないという懸念が増大することになります。

 通常は二者択一なので消去法で懸念の少ない候補を選ぶということで落ち着くでしょうが、今回の選挙ではケネディ氏が第三の候補として存在するため、健康面が重視されるほど若いケネディ氏に票が流れるものと考えられます。

Why the Biden-Trump Debate May Boost RFK Jr.


QooQ