トランプ氏の経済政策はほとんどの米国人にとって実は増税

2024/10/11

米国

 米大統領選の投票日まで1か月足らずとなり、両候補が掲げる公約を検証する報道が増えてきました。

 日経新聞記事でも紹介されていましたが、責任ある連邦予算委員会(CRFB)の試算では、ハリス候補は3.5兆ドル、トランプ候補は7.5兆ドル(いずれも中央推計値)と巨額の財政赤字が積み上がる計算となっています。

The Fiscal Impact of the Harris and Trump Campaign Plans

トランプ氏公約で財政赤字1100兆円増 超党派委が試算

 一般的には、「大きな政府」を標榜する民主党候補のほうが共和党候補よりも財政赤字を膨らませる公約を掲げる傾向にあるわけですが、トランプ氏は在任時に実施した所得税減税の拡大および恒久化を掲げているため財政に与える影響が極めて大きくなっています(減税分のみで5.3兆ドル)。

 この財政赤字の一部はトランプ氏が掲げる関税強化でオフセットされ、中国からの輸入品は関税率60%、その他の輸入品については一律10%の関税率の前提で2.7兆ドルの財政黒字と試算されています(一律20%関税率の場合は4.3兆ドルの財政黒字)。

 ハリス氏も減税を公約としていますが、トランプ氏のほうが減税規模が大きく、国民からすればトランプ案のほうがより魅力的に映るでしょう。


関税強化による家計負担は大きい

 しかし、ここで別の試算を勘案すると、耳障りの良さだけで有権者がトランプ案に飛びつくと痛い目を見ることになるかもしれません。

 税務経済政策研究所(ITEP)の試算では、所得金額で見た家計の上位5%は減税の恩恵を受けるものの、下位95%については実質増税になると計算しています。

A Distributional Analysis of Donald Trump’s Tax Plan

 ITEPの試算では、減税分として所得税減税(CRFB試算の5.3兆ドル分)に加え、残業代・チップ等を非課税とする公約も含める一方、実質増税である関税については一律関税率を20%(CRFB試算の4.3兆ドル分)として計算しています。

 つまり、CRFB試算では所得税減税による影響は関税による影響を十分に上回っているので、関税分を負担させたとしても家計の可処分所得が増加するように見えますが、ITEP試算も考慮すると、実は上位5%の富裕層のみがその恩恵に与るのであって、その他大勢は関税が引き起こすであろう物価高に苦しめられることを意味します。

 トランプ氏は関税の仕組みを理解していないので、関税を負担するのは米国民であるという指摘は受け入れないでしょう。

 国民の多くも関税の仕組みは知らないでしょうし、知っていたとしても減税分を上回るほどの影響があるとは考えていないでしょう。

 経済政策だけで考えると、民主党はインフレの責めを負わされている分不利であり、トランプ減税が魅力的に見える分、トランプ氏が支持されそうです。

 関税は大統領権限で実行できるとトランプ氏は考えているので、もし当選すれば就任早々に動きがあると考えられます。


 トランプ関税は経済的影響だけでなくサプライチェーンも含めて大混乱を招くと懸念する向きもあります。

Tariffs on all imports would create chaos for business


トランプ関税が貿易や家計に与える影響は計り知れないものがあります。


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