イエレン米財務長官は22日に、債務上限引き上げのデッドラインは6月1日である可能性が高いと改めて表明しました。
Treasury confirms U.S. default as early as June 1 without debt ceiling hike
デッドラインについて4か月前の発言時より日付が動いていないので、ブラフではなく実際に確度は高いと見るべきでしょう。(ただし、財務省が支払いに優先順位をつけるようであれば、対外債務におけるデフォルトはこの日付よりも後倒しになる可能性があります。)
4か月もの時間を無駄にした与野党に対して、財務長官は苛立ちを隠せません。
債務上限は予算とは無関係に設定されているため、予算において歳出が認められている項目であっても債務上限に達すると歳入を超える歳出が不可能となります。
予算成立時には議会は民主党が優勢であったため、民主党の政策項目を予算に盛り込むことができましたが、債務上限問題を契機として共和党が挽回しようとしています。
債務上限引き上げは民主党の政策項目である健康保険等の歳出削減を同時に行うことを主張する共和党に対し、歳出削減を条件とはしたくない民主党との間で議論が平行線を辿っています。
House GOP’s long-awaited debt limit bill features $1.5T increase
民主党から対案として独自の歳出削減案を呈示しましたが、共和党はこれを拒否しました。
民主党の政策項目へのフォーカスを抑えるために軍事費等を対象項目としたことに共和党が反発したものです。
債務上限引き上げは議会で決定する事項ですが、憲法の修正条項を適用すれば議会を迂回してホワイトハウスが債務上限を引き上げることが可能と主張する向きもあります。
Democrats press Biden to use 14th Amendment on debt ceiling
しかし、修正条項は明確に債務上限を対象として規定したものではないため、大統領にそのような法的権限があるかどうかがグレーということで、拙速に発動するつもりはなさそうです。(もし修正条項適用により債務上限を引き上げた後に裁判所から違法とされた場合、引き上げ後に発行された米国債は違法に発行されたものとなるため、前代未聞の事態にマーケットは混乱に陥ることが予想されます。)
両者協議では合意は得られていないものの、デフォルトは回避すること互いに確認したということで最終的に合意は得られるのだろうとマーケットは楽観視しています。
Tick, tick, tick: Biden, lawmakers fail to reach breakthrough on debt ceiling
その見方が正しいことを願うものの、前回の記事でも書いたように、マッカーシー下院議長は党内の強硬派を相手にしなければならないため、簡単に譲歩するわけにはいかない事情があります。
McCarthy has little room to maneuver in debt ceiling talks
債務上限引き上げで合意できなければ歳入を超える歳出は不可能であるため、その状態が続くと対外債務に対する元利金の返済ができなくなり、デフォルトということになります。
これが何を意味するか分からない人が多いため、デフォルトはたいした問題ではないと主張する議員等が少なくないのが気掛かりです。
そのような主張の背景の一つは、予算承認が遅れた際に起きる政府シャットダウンと混同されていることです。
予算が承認されるまでは一部公共サービスに係る歳出が制限されるため、公共施設の閉鎖等が米国では時折発生します。
不便なことはあっても一時的であり、国民生活に大きな支障をきたすものではないため、デフォルトによる影響も同程度という誤解からくるものです。
もう一つは企業や他国のデフォルト事例から大きな問題ではないと判断されているものです。
デフォルトが起きてもその後に立ち直って通常の企業・国家運営に戻ることが出来ている事例をもって、米国も立ち直れると考えているものと思われます。
しかし、米国のデフォルトとこれら企業・他国のデフォルトは次元が異なります。
米国は現在の世界経済の中心にあることをよく理解していない米国人が少なくありません。
米ドルが基軸通貨となっていることの意味や、米国債が世界で最も安全な資産として扱われていることの意味を理解していないのです。(一般人ならともかく金融業界の方でも理解していないことがあり驚かされることがあります。)
米国の軍事的および経済的な強さが米ドルや米国債に対する信用力の裏付けとなっているわけですが、米国人としては当然のこととして享受しているわけです。
米国の外では、基軸通貨であるからこそ米ドルで取引をしたり、外貨準備等として保有したりします。
そして保有する米ドルはもっとも安全な米国債の形で保有されることが多いです。
債券投資家は発行体のデフォルトリスクを勘案しながら投資を行いますが、米国債に限ってはデフォルトリスクを実質無視して差支えないものとして投資しています。
投資家によっては信用格付けの高い発行体のみを投資対象とするような制限を設けており、少ない選択肢の中から主に米国債に投資しています。
この米国債がデフォルトすればどうなるのか。
デフォルト実績があり、且つデフォルトリスクが引き続き大きい発行体であると認識を改めることになるため、そのようなリスクテイクができる投資家しか参入しない限定的なマーケットに変貌します。
安全資産を求めて投資していた投資家は代替投資先を検討することとなり、新規購入は控えるようになります。
米国債は世界最大の国債市場ですから、主要投資家が揃って売却に動くとなれば、これを引き受けることができる代わりの投資家は見当たらず、マーケットは崩壊する可能性があります。
そうなれば、債務上限の有無に関係なく、米国は国債を新たに発行することは難しくなり、国家破綻に至ります。(崩壊を食い止めるためにFRBが買い手に回る可能性がありますが、価格下落を食い止めたとしても信用力低下を止めることはできません。)
このような道筋への引き金となりうるデフォルトを弄ぶことはありえないはずなのですが、米国も政治家の質が落ちて久しく、前大統領もデフォルトを主張するトンデモ国であることは理解しておく必要があります。


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